
遊べる本屋で大人気だった「ヴィレッジヴァンガード」が危機的状況だ。
2025年5月期の決算では2期連続の最終赤字を計上。これを受けて全店舗の約3割に当たる81店舗を閉店させる方針を発表。最盛期に約400店舗あった店舗数は約200店舗ほどにまで減ってしまった。
日本を代表するサブカル文化の発信基地は、悲しいことに経営不振から抜け出せなくなった。
かつては唯一無二だった
ヴィレッジヴァンガードは1986年に愛知県名古屋市郊外で1号店を開店。
「遊べる本屋」をキャッチフレーズに、書店でありながら独自にセレクトしたちょっとクセのある本やCD、さらには使い道の分からないオモシロ雑貨やキャラクターグッズ、珍しい輸入菓子などを幅広く取り揃えており、一部の店内にはイベントステージも設置されていた。店外にはガチャガチャがずらりと並ぶなど、ほかの書店とは一線を画した新鮮な店づくりが人気を集め、全国各地へと店舗網を拡大していった。
1998年にはサブカルの街・下北沢に東京1号店を出店。現在、1986年に開業した1号店(名古屋市天白区)とともにもう1つの「本店」を名乗っている「ヴィレッジヴァンガード渋谷本店」は渋谷センター街にあった渋谷宇田川店(ビル建て替えのため閉店)を2017年7月に移転開店。
渋谷店内のステージでは毎日のようにアイドルをはじめ、さまざまなアーティストやクリエイター、作家たちのイベントが開催されている。
現在(2025年)ヴィレヴァンは国内47都道府県のすべてに出店しており、店舗の半分以上は「イオン」や「ゆめタウン」などといった地方のショッピングセンター内。都市部店舗では盛り上がりを見せるものの、実は「ヴィレヴァンの主戦場は地方都市」なのだ。
かつて「ヴィレヴァンっぽい商品」を売る店は、もちろん都市部にはいくつもあったものの、ヴィレヴァンの主戦場である地方都市にはそれほど多くはなかった。
しかし、近年、地方都市にもおもしろ雑貨が多い「ドン・キホーテ」や漫画・アニメ専門店の「アニメイト」、「未知の海外菓子に出会う」ならば輸入食品店「カルディコーヒーファーム」が増えた。これら3社はかつて地方都市では店舗が少なかったが、いずれも2015年から2025年にかけて「47都道府県すべてへの出店」を達成している。
ヴィレヴァンの主戦場である地方でも、ヴィレヴァンの影響力は相対的に大きく下がってしまったと言える。
消費者にとって選択肢が増えたことは嬉しいことだが、もはや「ヴィレヴァンである必要はない」時代になってしまったのかもしれない。
